新田ゼラチンダイレクト

わんコラム

第四回 犬の腸内微生物と乳酸菌

わんこ

腸内微生物って、腸内細菌と同じかしら?
乳酸菌って、腸内にいる善玉菌でしょ?

今回は、腸内微生物とその一種である乳酸菌についてのお話です。
わんちゃんの健康とのかかわり合いを含めて考えてみましょう。

腸内微生物とは

 腸内微生物とは、消化管の中に住む微生物のことです。乳酸菌のような細菌、酵母のような真菌が含まれ、このほかウイルスや原虫、寄生虫を含める場合もあります。

 消化管内には多くの微生物が存在していますが、その種類や数は犬の食べている食事や消化管内の環境によって変わってきます。胃酸や胆汁があると微生物はあまり生存することができず、微生物の食事が豊富に存在するとその数を増やすことができます。このため、胃や小腸には少なく、大腸内には多くの微生物が存在しています。

 犬の大腸は人間より短く、その主な役割はミネラルや水分を吸収することです。また大腸は、小腸で消化吸収されなかった栄養を微生物が発酵する場所でもあります。微生物は短鎖脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)や乳酸、ビタミン、酵素などを産生し、このほか、硫化水素やインドール、アンモニアのようなおならの匂いの成分も作り出しています。

 消化管内には多種多様な微生物が存在しますが、中でも腸内細菌は数が多く、研究も多く行われ、さまざまなことがわかっています。

犬

乳酸菌とは

 乳酸菌とは、細菌の一種です。腸内細菌の中でも代表的な善玉菌のひとつです。名前にもあるように、糖から乳酸を作り出します。消化管内にも存在していますが、ヨーグルトや漬物のような食品中、そして果物の表面や土壌のような環境中にも存在しています。

 この乳酸菌を利用するためには、その存在している場所から乳酸菌を集め(分離し)なくてはいけません。この分離してきた場所によって、植物性乳酸菌や動物性乳酸菌という呼び方があります。

 植物性乳酸菌は、植物性の場所で生育していた乳酸菌です。一方、ヨーグルトのように動物性の場所で生育していた乳酸菌を動物性乳酸菌と呼びます。分離してきた場所は異なりますが、どちらも同じ乳酸菌です。

 植物性乳酸菌は、植物に含まれるカテキンなどの抗菌成分や微生物の生育を妨げる酵素の存在にも負けずに増殖します。対して動物性乳酸菌は、ミルクのような完全栄養の中で増殖し、栄養の乏しい環境では増えにくいことも多く、植物性乳酸菌の方が厳しい環境でも生存できるといわれています。

腸内細菌の作用(善玉菌と悪玉菌)

 腸内細菌には、有益な種(善玉菌)と有害な種(悪玉菌)がいます。

 乳酸菌やビフィズス菌のような善玉菌は、悪玉菌を抑え、腸内pHを下げて腸内環境を整えたり、抗原性物質の分解を助け、腸の免疫グロブリンの産生を増やし、体内の免疫を整えたりと、大切な作用があります。一方、クロストリジウムのような悪玉菌は、感染症や下痢を起こし、消化物内容の腐敗を生じ、発がん性物質が作られてしまうこともあります。

 腸内細菌の合成してくれる成分は、犬によい作用をもたらしてくれます。その代表的な成分が、短鎖脂肪酸やビタミンです。

 短鎖脂肪酸の中でも酪酸は、人間の腸の細胞のエネルギー源であることがわかっていますが、犬でも大腸の細胞で利用されます。また、腸の細胞の増殖を促し、腸粘膜のバリア機能を強くしてくれます。

 腸内細菌の合成するビタミンの中でもビタミンKは、犬をはじめとして多くの動物種ではその必要量を腸内細菌がもたらしてくれます。抗生物質を長期間服用するような腸内細菌減少が生じる特殊な条件でなければ、ビタミンKの摂取は、通常必要ありません。

 葉酸も葉酸を不足させるような栄養バランスが悪い食事でなければ、腸内細菌の合成量で賄うことができると考えられています。

 このほか、チアミン(ビタミンB1)やリボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン、コバラミン(ビタミンB12)なども腸内細菌によって合成されますが、食事からの摂取が必要なビタミンです。

 腸内細菌は、消化器以外の病気とも関係があります。

 犬の肥満と腸内細菌には関係があり、糖尿病の要因となるインスリン抵抗性の改善に腸内細菌の効果が報告されています。

 また、犬の攻撃性と腸内細菌にも関係があり、腸内細菌が犬の行動に関わる物質を産生しているのではと考えられています。

 高齢犬では、腸内細菌叢が変化し、善玉菌が減少し悪玉菌が増加してしまいます。腸の炎症に良い作用のある酪酸産生菌も減少してしまいます。

 このように腸内細菌の異常は、肥満、糖尿病、問題行動、炎症性腸疾患などを発症、悪化させる可能性があるため、正常に保つことが重要です。

 腸内の異常時だけでなく、わんちゃんを心身ともにいい状態に保つために、乳酸菌のような善玉菌を増えるようにしましょう。

腸内細菌のお食事

 炭水化物の仲間である食物繊維やオリゴ糖は、腸内細菌の食事になります。一般的に、水溶性の食物繊維は、不溶性の食物繊維より、腸内細菌にとってよいエネルギー源(発酵基質)になります。

 炭水化物の消化率は、加工方法(調理方法)によって変わってきます。ドライタイプのドッグフードの多くは、エクストルーダー(押し出し機)という機械を使い、加工されています。私たちの食べているサクサクしたお菓子の中には同様の方法で作られているスナック菓子もあります。エクストルーダーは、粉砕したペットフードの原料を加熱・加圧して成型した後、高温高圧の状態でフードを押し出します。この時、圧力が急激に下がり、水分が蒸散して膨張することで、ドライフードができあがります。この加工方法は炭水化物の消化率を高めるため、炭水化物に含まれる栄養は犬に吸収されてしまい(いいことですが)、腸内の微生物発酵は減少してしまいます。

 犬の食事に食物繊維を加えると、腸内細菌がこの食物繊維を発酵して増殖するため、便に排泄される細菌量が増えます。細菌は窒素を取り込み代謝するため、結果的に便中の窒素量が増えることになります。腎疾患時には窒素老廃物が問題になりますが、腸内細菌によって体内の窒素老廃物の減少が期待されています。

 善玉菌である乳酸菌やその食事であるオリゴ糖などを一緒にわんちゃんへ与えることは、善玉菌を効率的に増やすことができ、よりその効果を得ることができると考えられます。わんちゃんの食事が消化の良すぎるドッグフードの場合や、わんちゃんの腸内環境が気になる場合は、乳酸菌サプリメントだけでなく、オリゴ糖のような善玉菌のお食事もわんちゃんに食べてもらいましょう。

善玉菌と善玉ウイルス

 細菌やウイルスと聞くと、感染するものや病原体など、悪い印象や怖いイメージがあります。

 上記したように、細菌には、腸内の善玉菌のようなよい作用を持つ種類が存在しますが、ウイルスにも似たようなよい作用があることがわかってきています。

 ウイルスや細菌は、犬や人間のような動物よりもはるか昔からこの世に存在しています。私たち動物が生まれたのは長い地球の歴史から見れば、つい最近です。ウイルスや細菌の住む世界に動物は生存するようになりました。動物はひとりで生きているのではなく、腸内微生物のように多くの細菌やウイルスと共存しています。良い免疫状態を保つために、私たち人間もわんちゃんも、腸内微生物のような多くの生命体と刺激しあい、よく寝てよく動き、きちんと食事を摂って健康を保つよう心がけましょう。

監修 清水いと世